何人かが集まって会議をすると、一人で考えるよりも多くの違った意見が反映されるため、結論がより安全で保守的なものになると思われがちです。
ところが実際は、往々にして、一人で考えるよりもむしろみんなで会議して考えた方が危険で無鉄砲な方向に行ってしまうことがあります。
これが「リスキー・シフト」と呼ばれる現象です。
リスキー・シフトが起こるのはいくつかの理由がありますが、最大の理由は、会議ではどの参加者も他の参加者よりも自分の方が、より「明確な意見」を持っていることを示したいと思うことです。つまり、他者に対して優位に立とうとする「他者優位性」の心理が働くからです。
特に多数の男性と少数の女性が集まって議論する場合、男性は自分を勇気ある人間だと見せたがる傾向が強いため、男性を中心として挑戦的意見が飛び交うようになります。
そのため、メンバーの多くが少々挑戦的な選択のほうがよいと思っているときは、各メンバーは他のメンバーよりリスキーな選択を主張することになり、会議の結論はどんどんリスキーな方向へと向かっていくことになります。そして後で冷静になって考えてみると、驚くほどリスキーな結論に至ってしまうことがあるのです。
第二次世界大戦中の日本軍閥や、ベトナム戦争初期のアメリカ政府などがその典型的な例だと言えます。
逆にメンバーが保守的な人が多く、分別のある人間だということを示したいと思っている人が多数を占めている場合は、失敗を回避することが必要以上に優先され、結局は現状維持で何もしないという結論に至ることが多くあります。
この現象は「セーフティー・シフト」と呼ばれています。
一般に、親しい人だけの集まり、専門家だけの会議、議題に関係した者だけの会議では、リスキー・シフトやセーフティー・シフトが起こりやすいと言われています。
リスキー・シフトやセーフティー・シフトを防ぐ一番いい方法は、できるだけ多様で異質な人をメンバーに加えることです。
また、ファシリテーター役の人が場の雰囲気をよく観察し、リスキー・シフトが起こりそうな時に、休憩を挟んでいったん議論をリセットするのも有効な方法です。
会議で出た結論を重視しないことはもちろん問題ですが、逆に会議で出た結論に縛られすぎてしまうことも、もしかしたら問題になるかもしれません。後ほど冷静になって考えてみておかしいと思ったらもう一度議論し直す、そういった柔軟性と勇気こそ、会議を実のあるものにするために必要な姿勢だと言えるでしょう。
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