2008年04月24日

NGO世代論

今回は、デビッド・コーテンの「NGO世代論」と呼ばれる理論を紹介します。

これは米国の開発学者コーテンが、自ら途上国の開発に従事しながら、NGOやNPOが進化していく過程を体系的に整理したものです。

基本的には途上国の開発に従事するNGOを対象としたものですが、国籍や分野を問わず、もっと広い範囲にも適応できる理論だと思います。

以下、その骨子だけを簡単に紹介します。


【第一世代】
ニーズ対応型の活動に従事するタイプ。
対象が当面不足しているもの、たとえば、食糧、保健衛生、住居などを補うために、サービスや物品をこれらの人々に直接提供する活動。

コーテンは「このような活動の初期の段階では、援助を必要とする人びとがなぜニーズを満たせずにいるのかについて、理論づけすることはめったにない」と述べている。

この第一世代やり方は、遅かれ早かれ限界にぶちあたるようになる。救援・福祉活動は症状を一時的にやわらげる以上のことはほとんどできないからである。
この限界に気づいたNGOは第二世代の戦略へと移行していく。


【第二世代】
自立に向けた小規模な地域開発と呼ばれるもの。
ニーズをかかえた人々がみずから必要なサービスを作り出し、必要な物品を調達できるような能力を向上させることに焦点を当てて活動するタイプ。

第一世代の活動を続けていく中で、ニーズが自分たちのサービス供給力をはるかに上回っていること、さらにはこのような対症療法的な活動が対象者の依存心を高めてしまい、自分たちがめざしていたのとは反対の結果を招いたのではないか、という疑問を抱き始める。
そして、ニーズをかかえた人々が自立するための能力開発や、そのための支援に活動の戦略を移していく。
このような活動の場合、個人を対象とするよりも、グループや小地域、農村単位を対象に職業訓練や識字教育、より生産的な農業技術の研修などを行う。

しかし、この第二世代の活動も限界に直面することになる。
それは社会のシステムや構造における矛盾であり、権益構造である。途上国の場合には特に、権力者に有利な市場ルールなど、地元支配階級の権力構造が確立され、かつそれが国や地方によって保護されていることが多い。
このようなシステムの前では、第二世代のNGOの努力もあまりにスケールが小さいことに気づくのである。


【第三世代】
全国レベルでの政策や制度を変革しようとするタイプ。
特定の地域に対して集中的に支援して成果を上げさせ、それをモデルとして周辺地域あるいは全国へと展開させようとする。その際に、既存のシステムが大きな障害となるため、そのシステムの変革を提唱して活動を行うようになる。

しかし、第三世代にもやがて限界がやってくる。
このような問題は一国だけの問題ではなく、国際的なルールや利権構造に問題があることに気が付くのである。


【第四世代】
国を越えた制度やルールの障害に立ち向かうNGO。
途上国のNGOや政府、あるいは先進国のNGOとも連繋して、国際社会の権力構造に立ち向かう戦略をとる。
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2007年12月20日

マグレガーのXY理論

これは1950年代後半に、アメリカの心理学者ダグラス・マグレガーの著書『企業の人間的側面』の中で提唱された理論で、人間に対する考え方を二つの基本形にまとめたものです。

X理論は、「人間は本来なまけたがる生き物で、責任をとりたがらず、放っておくと仕事をしなくなる」という考え方で、この場合、命令や強制で管理し、目標が達成できなければ懲罰といった「アメとムチ」による経営手法が必要になります。
従来のマネジメントはこの考え方に則っているといわれます。

それに対してY理論は、「人間は基本的に勤勉であり、条件や環境さえ整えば、特に周りから言われなくても自発的に動く」という考え方で、この場合、自主性を尊重して、自ら課題設定や評価をさせる経営手法となります。
個が確立した現代の経営においては、こちらの経営手法の方がふさわしいとマグレガーも指摘しています。

この理論は、コーチングやファシリテーションの理論的根拠としてよく引き合いに出されます。

自発性と自主性が命である非営利団体の場合は、もちろん後者のY理論の立場になるでしょう。
ただし、その主体性を束ねて一つの成果に結びつけるためには、明確なビジョンや方向性、サポート体制等の確立も必要になりますが。
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2007年12月15日

パレートの法則

これはもう今では誰もが知っている有名な法則です。

イタリアの経済学者で社会学者のヴィルフレド・パレートが、欧州各国や米国の統計データに基づいて統計的に所得配分の研究を行い、1896年に発表した法則です。

簡単にいうと、社会全体の富の80%は20%の人間に集中しているというもので、別名「80:20の法則」とも呼ばれます。

現在ではさらに一般化されて、全体の20%が全体の80%を独占するという意味で、品質管理、在庫管理、売上管理、マーケティングなど、さまざまな分野に適用されています。

たとえば、

・全社員の20%が、全体の80%の利益をあげる
・チームの20%の人が、80%の成果をあげる
・上位20%の顧客で、全売上の80%を占める

などです。

重要度の高い上位20%に集中すれば、全体の80%を効率的にカバーできるということから、資源を効果的に投入することが必要だということを示唆しています。

これを非営利団体にあてはめてみると、

・ドナーの20%が、全体の80%の寄付をしてくれている
・ボランティアスタッフの20%が、80%の成果を生み出す
・プロジェクトの20%が、80%の成果をあげる

となるでしょうか。

資源が限られている非営利団体ではなおさら、成果のあがる所に効果的にリソースを集中させることが必要ですね。
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2007年12月13日

マズローの欲求段階説

これまた定番中の定番、マズローの欲求段階説です。

アメリカの心理学者アブラハム・マズローが、人間の欲求を5段階に分け、それぞれ下位の欲求が満たされるとその上の欲求の充足を目指すと唱えた説です。
5つの欲求は、下から順に、生理的欲求、安全の欲求、帰属・親和の欲求、自尊の欲求、自己実現の欲求という順になっています。

「生理的欲求」は、空気、水、食べ物、睡眠など、人が生きていく上で欠かせない基本的な欲求をさしています。これが満たされないと、病気になり、いらだち、不快感を覚えます。

生理的欲求が満たされると、次には恐怖や不安がなく生きていくことを望むようになります。これが「安全の欲求」です。

三つ目は「帰属・親和の欲求」です。自己の生存と安全の欲求が満たされると、次に周囲の人との関係性に意識が行くようになるのです。会社、家族、国家など、あるグループに帰属していたいという欲求です。

四つ目は「自尊の欲求」です。これは人から賞賛されたい、自分の価値を認めてほしいと思う欲求です。

最後は「自己実現の欲求」。これは、自分の能力を最大限に発揮して、仕事や人生を充実させたいという欲求です。

マズロー.bmp

このマズローの欲求段階説は、よく企業や団体のメンバーのモチベーション・マネジメントに適用されてきました。

つまり社員やメンバーに動機を与え、団体内につなぎとめるためには、より上位の欲求を満たせる環境を作ることが必要だいうことです。
特には第四段階の「自我の欲求」と、第五段階の「自己実現の欲求」が重要になります。

成果があれば正しく認め、賞賛し、本人の能力を最大限に生かし、充実感を感じられる役割分担、仕事、責任等を与えてあげることが大切だということです。

非営利団体の場合も同じく、いつまでも「帰属の欲求」だけではいつか必ず限界が来ます。
メンバーの「自我の欲求」「自己実現の欲求」をも満たせる環境になっているかを、ときどきチェックしてみることが大切でしょう。
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2007年12月03日

ハインリッヒの法則

続きまして、これまたよく使われる理論に「ハインリッヒの法則」というものもあります。

これはアメリカの技師ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが発見した法則で、労働災害の事例の統計を分析した結果、導き出されたものです。

それは、

1件の重大災害(死亡・重傷)の背景には
29件の軽傷事故があり、
300件の「ヒヤッと」「ハッと」した出来事がある


というものです。

これをビジネスの分野に適用すれば、

1件の致命的な失敗の背景には、
29件の顧客からのクレームがあり、
300件のクレームにはならなかった失敗がある


ということになります。

非営利セクターでは、よく海外キャンプや災害救助などのリスクマネジメントに適用されます。

重大な事故が起こる前に、小さなミスを見逃さず、その芽を確実に摘んで対処をしておくことが大切だということでよく引き合いに出される理論です。
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2007年11月29日

メラビアンの法則

コーチングやコミュニケーションの話になると、決まって取り上げられるのが、この「メラビアンの法則」です。

少し前に『人は見た目が9割』という本が話題になりましたが、その根拠となっているのもこの理論です。

これはアメリカの心理学者アルバート・メラビアンが1971年に提唱した理論が元になっており、コミュニケーションの受け手が伝え手の何から情報を受け取るかを調べた内容です。

それによると、

・しぐさ、表情、姿勢などの身体言語…55%
・口調、抑揚、テンポなどの話し方…38%
・言葉そのものの内容…7%

という割合になったそうです。

要は、言葉の内容そのものよりも、話すときの表情や動作、そして口調などがより大きな影響を与えるということで、人と話すとき、聞くときには、相手の視覚に訴えることが大事だということでよく引き合いにだされます。

ただ、これは実際にはメラビアンが行った実験ではなく、そこから解釈されて導き出された俗説というのが本当らしいです。

でも、このデータ自体はまんざら間違ってはいないとは思いますし、非常にわかりやすい話なので、いろいろな場面に応用ができる便利な理論です。
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2007年10月03日

人材喪失リスクベスト10

これも少し前のリサーチになりますが、サンスパイラルという会社が20歳から30歳の社会人に対して、自分の会社を辞めたいと思う理由を調査しました。

以下がそのベスト10だそうです。

 @この会社の将来のあるべき姿が分からない
 Aこの会社が社会に貢献していると思えない
 Bこの会社には自分を成長させる機会や場がない
 C今の仕事に生きがいを感じない
 D自由にモノを言える雰囲気がない
 E自分のことが良く理解されていない
 F会社としての意思決定や決裁のスピードが遅い
 G会社での自分の将来像に期待が持てない
 H会社の風土になじめない
 I上司や同僚を信頼できない


1位は会社のビジョンが明確かどうかということですね。
2位に社会に貢献しているかどうかという項目があげられていることも、最近の風潮を反映しているように思います。

一つ特徴的なのは、「給料が安い」という項目が入っていないことです。

今の若い人たちが賃金うんぬんよりも、会社のビジョンや社会貢献度、そしてコミュニケーションのあり方など、文化面をより重視していることがわかります。

このリサーチでは企業人を対象にしていますが、これは非営利団体においても同じく当てはまることだと思います。

・ビジョンが明確かどうか
・本当に社会の役に立っているかどうか
・自分を成長させる機会があるかどうか
・コミュニケーションしやすい雰囲気があるかどうか


金銭的なつながりのない非営利団体においては、むしろこういった側面がスタッフやボランティアを結びつけ、つなぎとめる命綱だといえるでしょう。

むしろ非営利団体こそ、上記10の項目を満たせる団体を目指していきたいですね。
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2007年08月24日

エドワード・デシ「内発的動機づけの理論」

今回はちょっとアカデミックな内容を一つ。
先日Podcastを聞いていた際にふと耳にして興味をもった、「内発的動機づけの理論」というものを紹介します。

これはアメリカの心理学者エドワード・デシが1971年に行った実験です。


 実験の参加者は大学生で、2つのグループに分けて行いました。
 それぞれのグループには当時流行していた“ソマ”というパズルを課題として与えます。
 “ソマ”というのは、7種類のブロックを組み合わせて飛行機、犬などの立体モデルを作る遊びで、実験では5種類のモデルが用意されました。

 30分間で課題をやらせて、8分間の休憩を挟み、再び課題をやらせます。
 休憩時間にはトイレに行ってもいいし、部屋に置かれた雑誌を見てもいいし、何をしてもことになっています。
 また、一つのグループには正解に対して金銭的報酬が支払われましたが、もう一つのグループには何の報酬も支払われませんでした。


ここでデシが見ようとしたのは、休憩時間の二つのグループの様子です。

結果は、報酬を与えられたグループの大半は休憩時間に別のことをやり、報酬を与えられなかったグループの方は多くの人が休憩時間にも熱心にパズルに興じていたのです。

ここからデシは、人間にとって「内発的動機づけの方が外発的な動機づけよりも強い」という理論を導き出します。

報酬を与えられたグループの方は、報酬が与えられることでお金が動機となってパズルを解くようになったため、報酬がもらえない休憩時間は遊んでいたのに対し、報酬を与えられなかったグループの方はパズル自体の面白さが動機となったため、休憩時間も熱心にパズルを解くようになったのです。

報酬を与えられなかったグループの方が熱心にパズルに興じていたことから、基本的に人は金銭的な報酬よりも、その物事自体の楽しさ、充実感によって強く動機づけられるというのです。

さらにデシは、内発的動機づけを維持するためには、「有能感」「自律性」「関係性」が大切だと述べています。

つまり、「自分はできる」「頑張ればうまくいく」というような有能感「自分で決めている」「思い通りにやっている」という自律性、そして「自分が理解されている」「関心を持たれている」といった他者との関係性の三つが、仕事自体へのやる気を高めるのです。

金銭的な報酬を得られない非営利組織の場合は特に、いかにその活動自体を楽しく充実したものにできるかが重要ですし、そしてそのためには、

@メンバーに達成感を持たせる
A自分たちで考えさせたり、決定に関与させる
Bメンバー同士お互いに理解し、関心を向け合う関係性を築く


ということが重要だということになるでしょう。
posted by Arthur at 18:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 理論・リサーチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月25日

理想の社長、尊敬できる上司

これも少し古い記事(2007年4月末)になりますが、東京商工会議所が今年新しく会社に入った新入社員を対象に、「理想の社長」を有名人の中から選んでもらったところ、1位にはイチロー選手と北野武氏が選ばれたそうです。

そして、理想の社長の要素として項目を選んでもらったところ、
1位:「人間関係を大切にする」
2位:「明確な理念・理想を持っている」
3位:「実力がある」
4位:「仕事をよく指導してくれる」
という項目が上位に選ばれました。

1位が「人間関係を大切にする」であるところが興味深いですね。
やはり支援型のリーダーが求められているということなのでしょう。

2位は「明確な理念・理想を持っている」ということで、明確なビジョンと価値観を持つことが大切であることがわかります。

ちなみに、有名人の3位はヤクルトの古田監督、4位は爆笑問題の太田光、5位はみのもんたさんだったそうです。

もう一つ、gooリサーチが今年行った調査で、会社員に「尊敬できる上司の性格」をあげてもらったところ、以下のような項目があがったそうです(gooリサーチ調べ、2007年)。

@正当に評価してくれる
A責任転嫁しない
B決断力がある
C差別、ひいきがない
D信頼感がある
E人間的魅力がある
F部下の失敗を完全にカバーできる
Gよく話を聞いてくれる
H面倒見がよい
I教え方が上手

1位が「正当に評価してくれる」ということで、コーチングの3大スキルの一つ「承認」の大切さがわかります。
「よく話を聞いてくれる」も8位にライクインしています。

2位は「責任転嫁しない」なので、リーダーが責任感を持つことと、最終責任を取ることの大切さがわかりますね。

今は実力うんぬんというよりも、部下を一人の人間として扱い、正当に評価してくれる上司が求められているようです。
コーチングを導入する企業が増えているのも、こんな背景からでしょう。
posted by Arthur at 10:34| Comment(0) | TrackBack(1) | 理論・リサーチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月15日

スモール・ワールド理論

今回は、スモール・ワールド理論というものを紹介します。

これは社会心理学者のスタンレー・ミルグラムが提唱した仮説で、「世界はある意味小さ」く、「世界中のどの人へも、友人のネットワークを通せば、ほんの何ステップかで到達できるのではないか」という仮説です。

実際、ミルグラムが1967年に行った実験によれば、それが6ステップだったと言います。
ミルグラムが行った実験とは、国内から無作為に二つの組を抽出し、知り合いを通して手紙を渡していくというもので、平均するとその間に入る人が6人だったというのです。

この実験にはいろいろな問題が指摘されたため、その後様々な方法でこの理論が検証されましたが、結局、平均して6人を経由してつながるという事実は概ね正しいという結論に至ったそうです。

この実験が行われた1967年に比べて今は人口も増えていますが、メールなど伝達手段が格段に発達しているので、もしかしたらもっと少ないステップでつながっているかもしれません。

計算上では、
・1人に23人の知り合いがいるとすると…6ステップで1億5千万(日本の人口を網羅)
・1人に43人の知り合いがいるとすると…6ステップで63億2千万となり、世界人口を網羅してしまいます。

一人の影響力がいかに大きなものであるか、そしてそれが広がっていくことで世界全体に影響を与えることができるということを、なんとなくイメージできるのではないかと思い、この話を紹介しました。
posted by Arthur at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 理論・リサーチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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